2022年10月15日
北山ダムのヘラブナ釣り(4)
前回の続きから
口にハリがかかったヘラブナは、見よう見真似で、ハリスを握って持ち上げて、ハリを外す。返しが無いハリなので、すぐに外れる。
そうやってヘラブナを湖面に放すと、勢いよく泳いでどこかへ消えていった。(どこにいったかを目で追う余裕もないのだが)
「手の温度はへらにとっては火傷したような熱さですから、出来るだけ触らないようにしましょう」
Kさんが教えてくれた。
ハヤが釣れたときは、魚体をじかに触って、ハリを外していた。魚籠に入れたり、小さなバケツに入れたりしていたが、すぐに弱ってしまうように感じていた。もしかすると、手で触っていたから弱っていたのかもしれない。
あれは、触ったらダメだったのだ、と反省する。
(しかし、返しのないハリは外しやすいが、返しのあるハリだと掴まないと外れないだろう。まあ、ハヤ釣りでも返しのないハリを使えばいいだけの話ではあるが。いや、やっぱりハヤは手でつかまないと取り込めない気がする。タモ網(玉網)を使えばいいのかな。しかしケースバイケースで。手で掴むときも直ではなく手ぬぐいとか、タオルをつかって掴むとかでもよさそうだ。話は脱線したけども)
一枚釣れたので、さっそく二枚目を狙う。マッシュポテトを丸めて、ハリに付けて、仕掛けを振り込む。
すでにヘラブナは集まっている。 餌がなじんで、ウキの先っぽが水面から顔を出すと、すぐにウキに動きがある。(サワリという)
サワリのあとに、素早くウキが沈むとき(アタリ)がある。擬音語をつかって「ツン」ともいう。そのときがアワセる(竿先を引き上げてハリをかける)タイミングだ。
理屈ではわかっているのだけれども、実際にウキのアタリを見てアワセるのは、馴れないと至難の業だ。
ぼくはそれでもハヤ釣りの経験があったので、ウキのアタリ(ツン)にアワセてみた。竿先がぐぐっと、重くなる。糸が走る。
(よし、乗った)
心の中で、へら釣り用語を使ってみる。
へらが、左右に泳ぎ回って、やみくもに暴れまわる。引きが強く、まあまあ大きいようだ。なかなか寄せることができない。魚体が浮いたときに糸の先を見ると、どうやら口ではなく、魚体の側面にハリがかかっているようだ。
「あ、スレですね」
次の瞬間、しなっていた竿がビヨーンと戻って、「ヒュッ」と風を切る音とともに、糸がこっちに向かって飛んできた。
「あ、バレた。。」
「スレでしたね」
「スレ?」
「口以外のところにハリがかかることです。釣り上げてもカウントしません」
なるほど。ちゃんとアタリにアワセて、口にハリをかけて釣り上げることが大切なのだ。
「へらが寄りすぎているので、スレアタリ増えると思いますよ」
理屈としては、へらが体や尾っぽを使って、ハリの付いた餌に体当たりしたり、撥ね飛ばしたりしたときに、本アタリと思ってアワセてしまうと、ハリがかりするということ。ということで、餌を吸い込んだときのアタリと、体当たりしたアタリを見分けないとならないということになる。
身体で覚えるのはもちろんのこと、頭で考えただけでも難しい。
(Kさんの予言どおり、この日、僕はスレを何枚か釣り上げるはめになった)
そうこうしているうちに、1時間くらいがあっという間に過ぎた。
どこからか、音楽が流れてきた。学校からか?役場からか? 正午を知らせる音楽である。
「川浪さん、休憩しましょうか?」
「はい。休憩します」
素直に応じる。
さすがに集中してやっていたので、気が張っていたが、一息つくと身体も頭も疲れていた。
マッシュポテトの練り方から始まり、仕掛けの振り込み、ウキの見方、アタリの見方、アワセの取り方、魚の寄せ方、ハリの外し方など、ヘラブナを釣るために必要な事柄を一通り教わった。
ハヤ釣りを始め、川だけではなく海釣りも、釣りの経験はそこそこあったので、そう難しくないだろうと高を括っていたところがあったけども、へら釣りはなかなか難しい。しかし、なかなか難しそうなところが面白い。
そんな感想を抱きながら、釣り台から降りた。Kさんの釣り台は水のなかに脚を立ててあったので、釣り台から降りるということは岸に足をつけることになる。
釣っているときはパラソルの影に入っていたので、影から出ると、太陽が燦燦と照り付ける。
あー、無事に生還した
という感じがした。
釣り台の上では胡坐をかいて座っていたので、腰が痛くなっていた。なので、両手を腰につけて腰と背中を目一杯伸ばした。
「昼飯食べに、まっちゃんに行きましょう」
「いいですね。まっちゃん」
まっちゃんとは、三瀬にあるとても有名な産直市場店舗で、佐賀や福岡から多くの観光客が買い物に訪れる店だ。うどんなどのフードコートがあり、駐車場も広く、もちろんトイレもあり、休憩にはもってこいの場所だ。
ということで、僕とKさんは、まっちゃんへ車で向かった。なんとその距離、車で約2分。(2分かからないかも)
続きはまた次回。
(次回で、北山ダムのへらぶな釣りは、最終回です)
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2022年10月15日
川浪秀之(Webプロデューサー、作家)
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三瀬のおと(佐賀県三瀬村のコラムやエッセイ)
三瀬村・里山の恵み みつせファン https://mitsusefan.com
口にハリがかかったヘラブナは、見よう見真似で、ハリスを握って持ち上げて、ハリを外す。返しが無いハリなので、すぐに外れる。
そうやってヘラブナを湖面に放すと、勢いよく泳いでどこかへ消えていった。(どこにいったかを目で追う余裕もないのだが)
「手の温度はへらにとっては火傷したような熱さですから、出来るだけ触らないようにしましょう」
Kさんが教えてくれた。
ハヤが釣れたときは、魚体をじかに触って、ハリを外していた。魚籠に入れたり、小さなバケツに入れたりしていたが、すぐに弱ってしまうように感じていた。もしかすると、手で触っていたから弱っていたのかもしれない。
あれは、触ったらダメだったのだ、と反省する。
(しかし、返しのないハリは外しやすいが、返しのあるハリだと掴まないと外れないだろう。まあ、ハヤ釣りでも返しのないハリを使えばいいだけの話ではあるが。いや、やっぱりハヤは手でつかまないと取り込めない気がする。タモ網(玉網)を使えばいいのかな。しかしケースバイケースで。手で掴むときも直ではなく手ぬぐいとか、タオルをつかって掴むとかでもよさそうだ。話は脱線したけども)
一枚釣れたので、さっそく二枚目を狙う。マッシュポテトを丸めて、ハリに付けて、仕掛けを振り込む。
すでにヘラブナは集まっている。 餌がなじんで、ウキの先っぽが水面から顔を出すと、すぐにウキに動きがある。(サワリという)
サワリのあとに、素早くウキが沈むとき(アタリ)がある。擬音語をつかって「ツン」ともいう。そのときがアワセる(竿先を引き上げてハリをかける)タイミングだ。
理屈ではわかっているのだけれども、実際にウキのアタリを見てアワセるのは、馴れないと至難の業だ。
ぼくはそれでもハヤ釣りの経験があったので、ウキのアタリ(ツン)にアワセてみた。竿先がぐぐっと、重くなる。糸が走る。
(よし、乗った)
心の中で、へら釣り用語を使ってみる。
へらが、左右に泳ぎ回って、やみくもに暴れまわる。引きが強く、まあまあ大きいようだ。なかなか寄せることができない。魚体が浮いたときに糸の先を見ると、どうやら口ではなく、魚体の側面にハリがかかっているようだ。
「あ、スレですね」
次の瞬間、しなっていた竿がビヨーンと戻って、「ヒュッ」と風を切る音とともに、糸がこっちに向かって飛んできた。
「あ、バレた。。」
「スレでしたね」
「スレ?」
「口以外のところにハリがかかることです。釣り上げてもカウントしません」
なるほど。ちゃんとアタリにアワセて、口にハリをかけて釣り上げることが大切なのだ。
「へらが寄りすぎているので、スレアタリ増えると思いますよ」
理屈としては、へらが体や尾っぽを使って、ハリの付いた餌に体当たりしたり、撥ね飛ばしたりしたときに、本アタリと思ってアワセてしまうと、ハリがかりするということ。ということで、餌を吸い込んだときのアタリと、体当たりしたアタリを見分けないとならないということになる。
身体で覚えるのはもちろんのこと、頭で考えただけでも難しい。
(Kさんの予言どおり、この日、僕はスレを何枚か釣り上げるはめになった)
そうこうしているうちに、1時間くらいがあっという間に過ぎた。
どこからか、音楽が流れてきた。学校からか?役場からか? 正午を知らせる音楽である。
「川浪さん、休憩しましょうか?」
「はい。休憩します」
素直に応じる。
さすがに集中してやっていたので、気が張っていたが、一息つくと身体も頭も疲れていた。
マッシュポテトの練り方から始まり、仕掛けの振り込み、ウキの見方、アタリの見方、アワセの取り方、魚の寄せ方、ハリの外し方など、ヘラブナを釣るために必要な事柄を一通り教わった。
ハヤ釣りを始め、川だけではなく海釣りも、釣りの経験はそこそこあったので、そう難しくないだろうと高を括っていたところがあったけども、へら釣りはなかなか難しい。しかし、なかなか難しそうなところが面白い。
そんな感想を抱きながら、釣り台から降りた。Kさんの釣り台は水のなかに脚を立ててあったので、釣り台から降りるということは岸に足をつけることになる。
釣っているときはパラソルの影に入っていたので、影から出ると、太陽が燦燦と照り付ける。
あー、無事に生還した
という感じがした。
釣り台の上では胡坐をかいて座っていたので、腰が痛くなっていた。なので、両手を腰につけて腰と背中を目一杯伸ばした。
「昼飯食べに、まっちゃんに行きましょう」
「いいですね。まっちゃん」
まっちゃんとは、三瀬にあるとても有名な産直市場店舗で、佐賀や福岡から多くの観光客が買い物に訪れる店だ。うどんなどのフードコートがあり、駐車場も広く、もちろんトイレもあり、休憩にはもってこいの場所だ。
ということで、僕とKさんは、まっちゃんへ車で向かった。なんとその距離、車で約2分。(2分かからないかも)
続きはまた次回。
(次回で、北山ダムのへらぶな釣りは、最終回です)
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2022年10月15日
川浪秀之(Webプロデューサー、作家)
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三瀬村・里山の恵み みつせファン https://mitsusefan.com
Posted by みつせファン
at 21:00
│川浪秀之